Home > 一般入試 問題・参考作品解説(2012年度)

2012年度 美術学科 絵画専攻領域 実技試験問題

■デッサンⅠ(ドローイング)[5時間]

【問題】
自由に素描しなさい

【条件】
1. 解答用紙は縦・横どちらで使用してもよい。

【配布物】
a. 問題用紙
b. 解答用紙(画用紙B3 判)
c. モチーフ
  ふた付きガラスびん1 個
  原稿用紙1 枚
  5mm 方眼紙1枚
d. その他
  1. 下書き用紙/ 上質紙B4判
  2. 紙コップ( 削りクズ入れとして使用しなさい)

【禁止事項】
1. ガラスびんを割って使用すること。
2. 持参した資料や図版を見て描くこと。
3. 水や火気を使用すること。

【注意】
1. 条件や禁止事項に反していると判断された場合には、減点の対象となるので注意すること。

【持参用具】
鉛筆デッサン用具一式 ※水や火気の使用は認めません。

【意図】
・鉛筆で描くことにおける造形能力、および各自の制作意図を自由に見出し、素描表現として優れた意欲的作品であるかを問います。

【評価のポイント】
・発想力、観察力、描写力を総合的に見ながら、素描として豊かな表現になっているか。
・与えられたモチーフから、制作への意欲的な発想を得て描かれているか。
・描画材料(鉛筆)と支持体(紙)の特質をよく活かしているか。
・「条件」を満たしているか。
・「禁止事項」に記載された行為をしていないか。


■油彩画[ 6 時間]

【問題】
自由に絵画制作しなさい。

【条件】
1. キャンバスは縦・横どちらで使用してもよい。

【配布物】
a. 問題用紙
b. 解答用キャンバス(15 号F)
c. その他(1. 下書き用紙/ 上質紙B4判 , 2. 名票)

【禁止事項】
1. 持参した資料や図版を見て描くこと。
2. 火気の使用。

【持参用具】
油彩用具一式(アクリル系も可)
鉛筆およびプラスチック製消しゴム(氏名等記入用)
※火気の使用は認めません。

【注意】 1. 条件や禁止事項に反していると判断された場合には、減点の対象となるので注意すること。

【作問意図】
・絵画制作能力を総合的に問います。出題から各自の制作意図を自由に見出し、それを形態や色彩などに表現していく意欲的な制作能力を問います。

【評価のポイント】
・発想力、観察力、描写力を総合的に見ながら、絵画として豊かな表現になっているか。
・出題から、制作への意欲的な発想を得て描かれているか。
・絵画や素材の特質をよく活かしているか。
・「条件」を満たしているか。
・「禁止事項」に記載された行為をしていないか。



2012年度一般入試 参考作品紹介

※作品画像をクリックすると拡大表示になります。



三脚を画面中心にすえ、物質感の強い黒々とした厚い絵の具層がうねるような動勢感と力強さを創出し好感がもたれる。それは黄を背景にした黒色に現れる線描的な赤、青、更にドローイングにも見られるえぐり取るような短線の集積による効果も大きいと思われるが、表現がやや雰囲気に流れる傾向のあることを指摘しておきたい。




素描は丁寧に描き込まれたガラス瓶の周辺が魅力的であるが、左半分の処理に一工夫欲しかった。ほぼモノトーンで描かれた油彩は、モチーフと背景の人物などがうまく構成されていて、細部にまで神経が行き届いている。かたぼかしを多用した描き方も効果的である。




デッサンでは、モチーフの特質をよく活かした構成を丁寧な描写で描いている。油彩では明暗のリズムを上手く画面構成しており、大胆な絵具の使い方も効果的に使われており、力強い印象を作っている。いずれも自分の表現を目指す意思を感じさせる制作姿勢が評価出来る。




絵画を描いてゆく上で重要とされる資質の一つとして、見えるものをいかに生き生きと正確に描写するかということの他に、対象によって触発された作者の内的イメージがいかに大胆にその人の表現として挑戦的に画面上で展開され得ているかという点がある。




素描、油彩ともにモチーフの形を利用しながらも自由に絵作りしていて手慣れている。直線、曲線と柔らかい調子が画面全体にバランス良く配置されて心地よいが、描き方に頼り過ぎている。素直に描き込んだ部分もあると対比が生きてくると思う。




ドローイングは淡い明暗の調子、油彩はハーモニカルな色調とともに確かで繊細な感性が認められる。さらなる画面強度のためには調子の幅、色相数の増強が望まれる。注目すべきは出題されたモチーフを画面上部にわずかに描き、そこから落とされた影を主題に描いている点であり意欲的試みと評価できる。




絵画を描いてゆく上で、画家パウル・クレーが段階的に、実験的に行っていったように、画面上で形象と色彩がどのように緊張感を保ちながら関わり合ってゆくかという観点がある。それによって絵画ならではの生命的な動きのニュアンスが生み出されてゆく。




非常に早熟な受験生である。ドローイング、油彩ともに採点を気にしない大胆な解釈を試みている。特に油彩は色彩をほぼ捨て去り、形態の再現性も無視したかのような抽象的な画面は、しかし行為の痕跡とともに潔く、絵画作品としての高みを感じる。



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